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お別れ

金曜日、朝からラミナリアを風船に入れ替えて子宮収縮剤を入れる。しばらくして鈍い痛みが襲ってきて、これが陣痛なのかと思いながらお腹をさする。2回目の収縮剤を入れた後に風船がぐしゃっと音をたてて抜けた。そのまま分娩室に移動したけど、赤ちゃんは出てこない。でも待機室は臨月の妊婦さんも運ばれてきたので助産師さんが気をつかってくれて、「向こうは騒がしいから、こっちでゆっくりしてようね」って分娩室にいさせてくれた。3回目の収縮剤を入れた後、静かになった待機室に戻る。朝からの痛みと収縮剤の副作用の発熱とでぐったりしてくる。従妹が腰をさすってくれたり、汗を拭いてくれたりする。彼女も固い椅子に座りっぱなしでつらそうだった。海外で経過の連絡を待ってる彼に電話して、時間がかかりそうだから、日本の夕方になりそう、とりあえず寝ててって言った。彼は何時でもいいから、寝てても起きるから電話してねって言ってくれた。

助産師さんが診察して、赤ちゃんはだいぶ降りてきているけど子宮口の開きが小さくてひっかかってしまっているらしい。これ以上収縮剤を入れてもしばらく時間がかかりそうなこと、収縮剤の副作用で高熱が出てきていること、破水しているから長引かせると感染を起こして次の妊娠が難しくなることなどから、夕方全身麻酔での手術になった。本当だったらもっと時間をかけて赤ちゃんを綺麗に出してあげたいんだけど、破水しちゃったし、副作用もひどいからこれ以上は危険でできないんだ、ごめんね、と先生が言った。麻酔が入り、「喉にすうーっと来たら教えてください」と言われて「ペパーミントの香りがする」と答えた後、頭を地面の底から引っ張られるような感覚を覚えた後は「終わったよ」って先生が私の肩をぽんとたたくまで一切何もわからなかった。緑色の手術着の先生が横を通るのをぼんやり見てまた眠りに落ちた。しばらく眠っていた後、ストレッチャーで部屋に戻り、看護師さんが従妹に何か言ってるのを見ながらまた眠る。

目が覚めたとき、赤ちゃんは270gの男の子だったことを従妹が教えてくれた。麻酔でぼんやりしながら従妹に「男の子だと思ってた」とか、つけようと思っていた名前のこととか、いろんなことをしゃべっていたような気がするけど、どれくらいはっきりしゃべっていたんだろう。270gって聞いて、ああ、大きくなってたんだと思った。がんばったんだねって思った。

従妹に、彼に電話してって言ったら、メールで知らせといたから、電話はもう少しちゃんとしゃべれるようになってからにしなさいって言われた。22時近くなってやっと電話して、男の子だったよって報告した。そうかそうかってじっと話を聞いてくれた。立ち会えなくてごめん、帰ったら迎えにいくからねって言ってくれた。

翌日、朝から先生が部屋まで様子を見にきてくれた。喘息発作が出なかったかとか、胸は張ってないかとか聞かれ大丈夫ですと答える。先生も助産師さんも入院中、一日何度も部屋に来て声をかけてくれてありがたかった。新生児室と違う階の病室にしてくれたり、待機室が臨月の妊婦さんと一緒にならないようにとか、いろいろ配慮してくれたので、その点でイヤな思いをすることもなかった。

手術後2日目、それまで出てこなかった涙が溢れて止まらなくて、どうしようもなく悲しくなった。たとえ生後数時間だったとしても彼にはちゃんと寿命があったのに私が勝手に縮めてしまったのかも、、、という思いや、前日のエコーで動いていた心臓や足の指などを思い出して、自分の決断が正しかったのかどうかと考えずにはいられなくて、涙が止まらず部屋でひとりで泣いているときに、先生が入ってきた。泣いている私の肩をさすり、「大丈夫だよ、またできるから。ちゃんとまた妊娠できるように処置したんだから。あなたは妊娠できる身体なんだから大丈夫。」と言ってくれた。本当はあんまり言いたくないことだけど、と前置きして先生には2人の子供がいるけど、その前に奥様は4回流産されていることを話してくれた。「こんな仕事をしていたって、そういうことは起きるから。でも、それでもできるんだから、あきらめちゃだめだ」って。赤ちゃんをあきらめた時、病院の心ない対応に傷ついた人がたくさんいるみたいだけど、その点では私は恵まれていると思った。

月曜日、葬儀屋さんが来て埋葬の手続きをする。予定日は1月だったから産着とか何も用意していなくて、棺に一緒に入れてあげるものが何もない、私のものを入れてもいいですかと泣いてしまった私に葬儀屋さんが「いいですよ、お母さんのハンカチか何かを一緒にいれてあげてはどうでしょう」と言ってくれたので、そうすることにした。お骨を引き取りますか?共同の納骨堂に入れますか?と聞かれ、私が死んだ後に誰も参ってくれなかったらかわいそうだし、お骨を手元に置いていると一生立ち直れないかもと思って共同の納骨堂に納めてくださいとお願いした。でも、今となっては手元にお骨を引き取った方が気持ちの切り替えは早くできるのかも、、、と思ったりもする。お参りはできるので、納骨されたらお参りに行ってこようと思う。


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